こんにちは!広報の古橋です。
ボーンレックスはもっといい日本、もっといい東京の実現を目指し、様々な角度から光を当てた取組みを展開しています。またそれらの取組みは、東京都が主催する様々なプロジェクトのパートナーとして事業を手掛けることもあります。
今日はそんな中でも当社がサポートしている、「King Salmon Project」と「Be Smart Tokyo」における大田区との取組みについて、3月22日(金)に開催したイベントレポートと共にご紹介します!
■King Salmon Project
東京の抱える社会課題の解決につなげるプロジェクトを都内行政現場で行い、スタートアップのプロダクトやサービスの普及拡大を図るとともに、東京都との協働、プロダクト・サービス導入をきっかけに、スタートアップがグローバルに活躍する企業へと大きく成長し、後続するスタートアップのロールモデルとなるような「キングサーモン企業」の輩出につなげることを目指す事業。
https://kingsalmon.tokyo/
■Be Smart Tokyo
先端技術等を活用した便利で快適な都市「スマート東京」の実現を目指し、独創性・機動力にあふれるスタートアップ等が各エリアと協働することで、都民の暮らしの利便性・QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高める新しいサービスをスピーディに生み出すことを目的としている事業
https://www.be-smarttokyo.metro.tokyo.lg.jp/
Why 大田区?
都内×スタートアップ文脈でよく登場するのは渋谷区ですよね。では、今回は何故大田区との協業を強化するに至ったのか。大田区 産業経済部 産業振興課 臼井正一課長のお話から紐解いてみます。
今回の取組みの背景には2つあると臼井さんは教えてくださいました。
① 羽田イノベーションシティの開発(通称:HICity)
羽田イノベーションシティ(HICity)の開発は、世界と地域を繋ぐ新たな交流拠点の創出と、新産業の発展・世界への発信を目指しています。大田区の特性として、羽田空港の近隣に位置し、世界と直接繋がる一方で、日本有数の高度な技術を持つものづくり企業が集積している点が挙げられます。これらの特性を活かし、高い技術力を持つ企業と世界のアイデアを掛け合わせることで、イノベーションを実現しよう!としているのが大田区なのです。
② SDGs未来都市の認定デル事業の選定
大田区は、内閣府からSDGs未来都市として認定されており、その実現に向けたモデル事業にも選定されました。このダブル認定は、全国の自治体の中で約3〜4%程度しか受けられない本当にレアなケースなんだそうです・・!HICityを起点に、地域内の社会課題を新しい技術を用いて解決し、持続可能な社会の構築を目指す取り組みが評価されたことが理由になったそうです。
こういった背景により、大田区はスタートアップや様々なステークホルダーと協力し、社会課題の解決や新しい産業の創出へと繋げていくことに積極的なんです。
大田区のイノベーションと持続可能な社会実現の挑戦
イノベーションに熱心な大田区。実際にはその実現に向けてどのような取組みをされているのでしょうか?大田区 産業経済部 産業振興課 山中秀規係長にお話いただきました。
大田区の羽田イノベーションシティ(HICity)では、持続可能な社会の実現に向けた実証実験が積極的に行われています。羽田空港に近接している利点を活かし、様々な企業や組織が集まるこの街では、先端産業と文化産業を二つの主軸として、日本の技術や魅力を発信するための環境が整備されています。HICityは環境創造発信拠点としての役割を担い、さらに大田区が設置した産業交流空間PiO PARKでは、様々なイベントやコワーキングスペースを通じて、イノベーションの創出に取り組んでいるのです。HICityを大田区のテストベッドとして捉え、自動運転バスの試験運行や、ロボットによるエレベーター連携の実証などが日常的に行われています。
さらにこういったHICityを軸とした実証実験を、本格的に区内展開していく試みを今後計画されているそうなんです!大田区全体の発展に寄与することが期待できますね。
「Be Smart Tokyo」では、HICityのグランドオープン前よりこれらの実証実験のサポートを継続的に行ってきたのですが、このように大きな拡がりが叶ってゆくことはとっても嬉しいことだなと思います。
革新的省エネ換気、大田区での実証実験が大成功!
今回、大田区と共に挑戦に挑んだcynaps株式会社は、当社が実装促進事業者としてスタートアップと、スタートアップが保有する技術やサービスの導入先となるフィールドを提供する自治体やディベロッパーなどとの連携を支援する「Be Smart Tokyo」にて、2022年度に“省エネ換気”を実装させるcynaps株式会社が採択され、HICityでの実証実験の支援をしたことがはじまりでした。
そして翌年の2023年度、協働促進サポーターとしてスタートアップと都内行政現場の協働を支援している「King Salmon Project」においても、cynaps株式会社が再び採択されたのです!そしてその実証実験現場として、「持続可能な環境先進都市おおた」の実現を目指す大田区とのマッチングが叶いました。
共に協業プロジェクトに挑戦したcynaps株式会社 代表取締役 岩屋雄介さんと、大田区 産業経済部 産業振興課 産業振興担当係長 藤内悠輔さんにパネルディスカッションを通して当時のお話などを伺ってみました。
実証実験成果報告レポート
まずは、岩屋さんに実証実験の内容と成果について発表をしていただきました。
▼協働プロジェクト概要
概要
既存施設に後付け可能な換気制御プロダクト「BA CLOUD」を大田区との連携のもと、大田区産業プラザPiO等へ導入し、換気効率を最適化することで空調の電力使用量を削減する。
実証実験場所
大田区産業プラザPiO
カムカム新蒲田
羽田地域力推進センター
プロダクト/サービスの概要
「省エネ換気」はカーボンニュートラルの観点から注目されていたものの、従来型のものは後から実装する難易度が高く、費用も高額なことから導入が進んでいなかった。一方で、シナプスが提供する、換気をコントロールする革新的な空調制御システム「BA CLOUD」は、先進的なIoT技術によりサーバーや複雑な配線等が不要であり、デバイスが手のひらサイズなので容易に後付けの設置が可能。故に、既存空調設備の省エネ化を実現することが容易に可能となる。
実証実験概要
室内のCO2濃度を測定し、人流増減などを含めた環境状況に応じて換気装置の運転を制御。装置の運転状態を切り替えつつ、電力削減率を測定。
実証実験の結果は、換気制御を通じて電気使用量を削減し、CO2排出量を低減できることが証明されました!さらに、省エネ運転は室内環境に悪影響を与えず、快適性を保持しながらエネルギー消費を抑えられることも分かりました。
シナプスと大田区との協業で、今回トライした手法が、省エネと環境負荷低減に向けた有効な手段となり得ることが明確になったのです。
■実証実験結果の詳細
省エネ運転により産業プラザPiOでは電気使用量が約12.23%削減されました。これは年間電気使用量としては約88.94%の削減に繋がります。
さらに、室内の空気環境についても、省エネ運転時は二酸化炭素濃度が基準値1000ppmに対して700-750ppm程度と、良好な状態を維持できていることが確認されました。温度と湿度に関しても、省エネ運転時と通常運転時で大きな差はなく、問題なく運用できたことが示されました。
両者の出会い、はじまりは突然に、そして気づいたときにはもう始まっていた!?
そんなシナプスと大田区の取組み、いざはじめるぞ!となると色々難しいこともあったようで、当時の話などを赤裸々にお二人に語っていただきました。
―今回の協働プロジェクトのキッカケはなんでしたか?
藤内さん:昨年度にシナプスさんが「Be Smart Tokyo」でHICityで実証実験をされているのをきっかけに知りました。大きな成果を挙げられていることを聞いて、大田区が掲げるビジョンにとっても合うと思ったので、是非大田区とも一緒に・・!と思ったんです。
岩屋さん:最新かつ大きな施設で実証実験ができるなんて、最高の機会だと思いました。一方で本当に良い機会だったから、こんなチャンスを本当に得られるのかな!?という気持ちでした。
でもそんな心配はよそに、ボーンレックスさんに間に入っていただくことで、すごくスムーズに実証実験をはじめることができました。
―積極的にスタートアップと組みたいと思いつつも、うまくいかないことってあるんですか?
藤内さん:行政は意思決定に時間が掛かったり、予算の制限もあります。また、そういった協働の話があったとしても、それを都度各部署に話を振って進めていくような形を取っていて、体系的に進めていく仕組みもなかったんです。なのでなかなか前に進めていくのが難しかったです。
―そんな中でも今回スタートアップとの取組みがうまくいったポイントは何だとおもいますか?
藤内さん:区の全体の計画に乗るような流れ(今回であれば大田区SDGs未来都市計画)を汲むことだと思います。また、行政は公平性を保つことが重要なので、民間企業との協業を推進していくときに、東京都の事業に相乗りできることは非常にやり易いなと思いました。
―HICityのような背景はこれまでにもあったと思うが、それでも困難さがありましたか?
藤内さん:スタートアップをはじめとした公民連携が大きな流れになって、やり易い風潮になってきたと思うのですが、その一方で、具体的にどう進めてらいいかが分からず手探り状態なのが正直なところです。
ボーンレックス深沢:行政とスタートアップの協働においては、共に成長していくストーリーをつくりだすことがとても大切です。よく「行政が所有しているアセットを貸してほしい!」みたいなお願いって多いと思うのですが、協働の出発点は何であったとしても、まずは双方にメリットがあるように仕掛けていくことが肝心だと思います。
―今回の協業プロジェクト、ずばりどうでしたか?
岩屋さん:非常にスムーズでした。行政との取組みって大変なんだろうなと思っていたんですけど、ボーンレックスさんが裏でいろんな調整をしてくれて、あれよあれよと気づいたときには小池都知事の名前が入った契約書にサインをしていました(笑)その時にはついにここまできたんだなと思いましたね。自分の力だけではまさかこんなことにはならない。非常に実り多く、有意義な取組みでした。
ーシナプスさんの事業戦略の中で、大型施設での取り組みはシナリオがありましたか?
岩屋さん:もちろんあって既に動いていました。大型施設だけど、決裁権はその建物のオーナーにあるようなところをターゲットにしていました。そういう考え方の下、営業をしていたのですが、実際はたらいまわしにされたりしてなかなか上手くいかなかった。それを永遠に繰り返しているとその時間ってスタートアップにとっては致命的なんですよね。そんな時に「King Salmon Project」という事業の仕組みの中でついにチャレンジすることができたんです。
―「King Salmon Project」における協業において良かったことと、今後のチャレンジについて教えてください
藤内さん:これまでなかなかできなかった公民連携による実証実験でできたこと、そして成果を残せたこと。さらにこの取組みを区の計画にものせられたことがとても良かったと感じています。
今回の挑戦で、公民連携におけるポイントや流れなどはつかめたと思うのですが、区の課題解決にはまだ辿り着いていないと思うので、実証実験フレンドリーシティなどの特性を生かして実現してゆきたいです。
岩屋さん:今回の座組を通して、苦手意識を持っていた行政との取組みができたことはとても良かったです。東京都と大田区のお墨付きを得られたことは、民間への営業でも後押しになっていくと思います。ボーンレックスさんの支援のおかげで煩雑な書類作成もなく、考えられないほどの短期間で契約にこぎつけることができました。
もっと成果が出そうだという観点で、実証実験で本当に挑戦してみたいと思っている施設にはまだアクセスできていないので、そこにチャレンジしていけるように、引き続き実績を積み上げることに尽きるのかなと思います。
大田区とシナプスの協業プロジェクトにおいては、公民連携というテーマのもと、困難だと思われることも多々あったようです。しかしそんな中でも、この協働プロジェクトが成功した背景には「共に成長する(したい)」という強い思いがありました。
お互いの強みを活かしながら、一緒に価値ある成果をつくりあげる行為は、協働関係における真の鍵だということが見えてきました。
公民連携を加速化!スタートアップとの交流会も実施
「Be Smart Tokyo」は、先端技術等を活用した便利で快適な都市「スマート東京」が実現されることを目指しています。本プロジェクトは、独創性・機動力にあふれるスタートアップ等が各エリアと協働することで、都民の暮らしの利便性・QOLを高める新しいサービスをスピーディーに生み出すことを目的としています。よりスマートサービスの実装を増やしてスマート東京を実現するきっかけとするために、今回のイベントのクライマックスとして、スタートアップ7社と大田区の様々な部署に所属する職員が参加する交流会を実施しました!この会では、現場で直面している具体的な課題に対する解決策を、実際にスタートアップのサービスを体験したり、会話をしながら共に模索することで、新たなヒントが見つかることを期待しています。またこの交流を通じて、第二のcynapsともいえる、革新的な公民連携を大田区から再び生み出すことで、イノベーションシティの実現を加速させることを狙っており、さらに大田区における都民の生活の利便性やQOL(生活の質)の向上を目指し、「Be Smart Tokyo」の具体的な成果を目に見える形で示すことを目的としています。
▼参加スタートアップ
・AWL株式会社:https://awl.co.jp/
・株式会社アシオット:https://asiot.jp/
・cynaps株式会社:https://www.cynaps.jp/
・株式会社Spectee:https://spectee.co.jp/
・株式会社Secual:https://secual-inc.com/
・Biodata Bank株式会社:https://biodatabank.co.jp/en/
・RYDE株式会社:https://ryde-inc.jp/
最初に各社によるピッチを行った後に、各社ブースにてフリーディスカッションが展開されました。
株式会社Spectee 取締役 根来(ねごろ)さんに、大田区とはどんな協業ができそうかを聞いてみたところ、製造のまち大田区においては特に、サプライチェーン管理に貢献できそうだというお話をいただきました。
Spectee は災害関連情報をリアルタイムで収集し、アラートを上げるサービスです。情報源となるのはX(旧Twitter)などのSNS投稿、YouTubeなどの動画投稿、降水量や花粉飛散状況といった気象データ、渋滞情報といった交通データ、河川や道路に設置されたカメラ映像などがあります。実際に年頭に発生した能登半島地震では、ある製薬関連企業が地震発生後に被災地域に入る取引先工場を特定。被災状況に関するアンケートを自動送信し、人的被害や建物損壊の有無などの被災状況を一元的に管理したそうです。そして翌日にはすべての取引先工場の被害状況を確認できたそうなんです。
もちろん防災にも大きく寄与しそうです。根来さんは、「当社のサービスを都市OS化して、大田区がスマートシティを推進していく上で広く活用ができるようになると思う」と話してくださいました。
交流会ではたまたまブースが隣り合ったスタートアップ同士がお互いにシナジーがありそうとのことで、ディスカッションをはじめる場面もありました。公民連携だけではなく、スタートアップ同士の連携の機会にもなったようでした。
まとめ
わたしは日頃広報として当社の取組みを中心に情報発信させていただくのが主なので、今回のようなスタートアップや行政の方と直接会話できる機会は貴重なひと時だなと感じつつ、とても新鮮で、かつ私自身のモチベーションアップにもつながるとても良い機会になったと思います。
そして図々しくもシナプスの岩屋さんと、大田区の藤内さんにズバリ、ボーンレックスの評価についてって聞いてみちゃいました。
岩屋さん「本当にいいと思います。とても親身になってくれる。なにより、スタートアップって時間がないからこちらでやっときますよ!みたいなのが本当に助かりました。」
藤内さん「公民連携において様々なハードルを感じていたけど、間に入っていただいてスムーズにできました。」
うれしいですね(^^)
そして更にうれしいことが・・!本取り組みを経て、今回取り組みを行った3施設での本格導入向けて調整が進められていると聞いております。
この成果はきっと、単に実証実験を実施することをゴールに据えていたら得られなかったことだと思います。大田区とシナプス、そして当社の3社が実証実験の成功とその先に続く新たな道に強く執着した結果だと思うのです。
公民連携、さらには民間企業間の連携も含め、共に成長し、共に価値を創造することが、より豊かで持続可能な未来へのキーになり得ることを、大田区とシナプス、そしてボーンレックスで証明できたのではないでしょうか。公民連携の新たなモデルを提示し、スマートシティ実現の可能性を一層広げたこの取り組みが、今後の新たな挑戦に向けた大きな一歩になっていくことを願います。ボーンレックスはもっといい日本、もっといい東京の実現を目指し、スタートアップと行政の協働を引き続き力強くサポートしてまいります!